博士課程への進学に対し、ネガティブな要因として大きく以下2つがあると考えています。
将来性
お金
本記事ではまずこの2つについて概説した上で、”お金”への対処法を紹介します。
将来性
まず将来性について、博士まで進学するとアカデミックに残るしかないと思う人も多いのではないでしょうか。また進学した際に生じる平均3年の機会費用(主に民間での給料、就職先の選択肢の幅等)と天秤かけた際に旨みを感じない、などもあると思います。後者が特に大きいと個人的には思いますし、実際日本の労働市場的にデメリットに働くのも事実です(データサイエンスみたいなホットなものは例外として)。
修士では学歴を上げたり、少し専門的な領域に片足突っ込むなどで就職にて差別化を図りやすいですが、博士では片足どころか体全部入れるレベルなので、話がかなり異なってきます。
ネガティブ意見ばかりになりましたが、博士ならではのメリットも当然あります。個人的には時間を全て自分で管理できる所です。授業も基本的になく、何をするかは自分次第になります。自分は友達との起業であったり、UTEconという経済をビジネスに活かす経験を積むことができました。これが就職にどう活きるかは、進行形で就活してるためまだわからないですが、将来性と博士での生活についてはまた別の記事で紹介したいと思います。
お金
次にお金について、博士課程は学生であり、基本的に生活費を自分で調達する必要があります。その対処法としては
バイト
奨学金
支援金
の3つです。
1つ目については、主に担当教員のもとでのRA(研究補助のバイト)があり、月10万程度(20時間/週×1300円/h×4=104,000)稼げます(週あたりの時間は大学で決められており、京大では最大20時間、また院生のバイトは大体時給1300円くらい)。
2つ目については主に日本学生支援機構で、月8万or12.2万になります。他にも返済無しの奨学金等ありますが、採用人数が一桁などザラでハードルはかなり高いです。自分はD1の時月12.2万借りてました。
3つ目はここでは国からもらえるものを指すとします。主に学振というものがあり、博士学生は学振に採用されることを基本的に目指します。ただ採用率は大体20%前後でハードルは高めです。
少し前までは学振ぐらいしか国からの支援がなく、金策に困り果てた学生はバイトor奨学金に頼らざる得ませんでした。しかし最近国も博士への支援を強化しており、金銭的なハードルを取り除こうとしてくれています。また担当教員から聞いた話では、更にこの金銭的援助を強化していこうとする動きがあるみたいです。
本記事では、実際に自分が受けた支援金とその申請内容について紹介したいと思います。
支援金
まず国からの支援金にどういったものがあるのかですが、こちらのサイトがまとめてくれています。しかし、学振以外は大学が支援先として選ばれているかどうか、またどういった分野で選ばれているかが異なるため注意する必要があります。
ちなみに京大からアナウンスされたは文科省フェローシップとJST次世代の2つで、経済ではおそらく後者の方だけでした。
では自分が国からの支援金として受け取ったものですが、以下2つです。
JST次世代
学振DC2
JST次世代
1つ目について、自分は月15万+13.3万の研究費をもらいました。2021年の10月1日から募集が開始され、12月から支援が始まりました(友達は支援がもう少し早かったです)が、自分のはちょうどこの支援が始まった時なので、今は申し込み時期がもしかしたら違うかもしれません(後輩に聞いたら3月に応募締切だったみたいです)。また研究費も人によって違いました。
この支援の採択に向けて必要になったものは以下3つです。
申請書(研究計画等)
推薦書 (担当教員からのやつ)
修士課程の成績
申請書の内容は学振における研究計画だけで、具体的内容は「研究の位置づけ」と「研究目的・内容等」になります。なので、学振に応募していれば楽です(自分はほぼコピペでした)。
採用人数は2000人(3学年合計で6000人)となっていますが、京大ではD1:160名程度、D2:160名程度、D3,4:195名程度となっており、大学によって異なる可能性が高いです。この支援を受けた先輩や友達も多いので、学振に比べればかなりハードルが低いと思います。文科省フェローシップの方もあるみたいなので、京大全体でいえば金銭的支援を受けた人はかなり多いのでは、と思います。
学振DC2
まず学振は博士に進む人は全員知っていると思います。学振については前回「学振まとめ」で紹介しましたが、改めてここに体験談に焦点をあて記載します。
支援内容ですが、自分は月20万+100万の研究費をもらっています。研究費については支援してもらえる期間全体(DC1なら3年分、DC2なら1年or2年分)で自分で申請金額を決めるので、人によって違います。最大金額は実験系で年100万、非実験系で年60万、特別枠で年150万となっています。特別枠には何が該当するのかわかりませんが、自分は非実験系で2年120万で申請し、結果100万となりました。
支援の採択に向けて必要になったものは主に以下2つです。
申請書(研究計画等)
評価書 (担当教員からのやつ)
評価書は先生がうまく書いてくれるはずなので、採択されるかは申請書の内容がほぼ全てです。具体的内容は「①研究計画:(1) 研究の位置づけ (2) 研究目的・内容等」・「②研究遂行力の自己分析 :(1) 研究に関する自身の強み (2) 今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素 」・「③目指す研究者像等 :(1) 目指す研究者像 (2) 上記の「目指す研究者像」に向けて、特別研究員の採用期間中に行う研究活動の位置づけ 」になります。
この内容は2021年以降のもので、それ以前は研究遂行能力が特に見られていたのだと個人的には思います。元々②と③の内容は1ページ内で収められていましたが、2021年からはわざわざ3ページも割かれていることから、潜在的な将来性をどれだけアピールできるかに変化したのだと私は考えています。つまり、当然業績が大事なことには変わりないですが、「研究者になった後の解像度」も重要になっている、ということです。なので、学振に応募を考えている人は「どんな研究者をカッコ良いと思うか」「研究者としてどう世に貢献したいのか」を考えておくと良いかもしれません。
おわりに
本記事では、博士におけるネガティブ要因の一つであるお金について、特に自分が受けた支援を紹介しました。将来性については日本の労働市場に関わるものなのでアメリカのようには中々難しいですが、お金に関しては昔よりもかなり良くなっていますし、これから更に拡大する可能性があります。
支援金に加えてRAや学外での研究バイト(経済ならサイバーやUTEcon等)などを行うことで新卒以上は稼げます。学振も研究系のバイトなら寛容になってくれているので、お金が不安材料として大きいのであれば挑戦して進学してみても良いのではないかと私は思います。
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