経済に興味を持ち大学院進学を決めた人たち、歓迎します。
しかし、調べても経済大学院の情報が全然ない!また、記事古くね?これを信用して大丈夫なの?てかどこの大学院にすればいいんだ?という悩みを持つ方々はたくさんいると思います。実際私もそうでした。私は他の大学から京大に来たので、不安しかありませんでした。
悩める受験生たちの為に、大学院入試にむけて何を勉強すれば良いのか、進学前に必要な知識は何かを改めて発信し、また大学選びの指標を本記事でお伝えできればと思います。
ここで紹介する参考書等は大学院入試レベルと、進学する前に勉強しておいた方が良いものになります。その上のレベルは「大学院レベルのコア科目紹介」で紹介します。大学院では実際に何を勉強するのかを知りたい方はそちらも読んで頂ければと思います。また、ここでは筆記試験のみを取り上げ、研究計画書や英語(TOEFLやTOEIC)については触れません。(研究計画書はこちら、英語(TOEFL)の予想ボーダーはこちらで紹介してます)
大学院入試でほとんどの人が受けるであろう科目は
ミクロ経済学
マクロ経済学
の2つだと思います。大学院のコースによって必要な科目数や、研究計画書の有無などは変わりますが、ほぼこれだけです。また、ミクロマクロ以外にも、ここでは数学、統計、計量経済もついでに紹介しています。(数学については科目としてある場合もありますが、ミクロマクロをより深く理解するためにも追加で勉強をお勧めします)
全てにおいて共通していることで、一通り学習し終えたら志望校の過去問を見て頭の中で解法の方針が浮かぶかを試してみてください。余裕(○)、もしかしたらこれかな?(△)、全くわからん(×)、の3段階で評価して、△と×の部分を中心に教科書を読み返していくと良いです。また、注意しなければならないのが、院試には解答がないことです。なのでその科目の先生などに頼んで解法を教えてもらってください。(当然解いてから!先生は基本やる気のある学生にとても優しいので、恥ずかしがらずに門を叩きに行きましょう)
具体的に必要な科目については、最後の「主要な大学院について」での大学名の所でURLを貼っておくので、参考にしてください。
ミクロ経済学
ミクロ経済学について、メインテキストは神取先生の「ミクロ経済学の力」で十分です。すでにやり終えて時間も十分にあるのなら、Varianの「Microeconomic Analysis」もやると良いです。後者のテキストは院試レベルを超えていますが、院での授業はそのもう一つ上のレベルのMas-Colellの「Microeconomic Theory」を扱う場合が多いので、学部から院への橋渡しとして重宝します。
神取先生の教科書を一通り学習した後の演習では、武隈先生の「演習ミクロ経済学」と、猪野先生の「ミクロ経済学演習」の2つが有名です。(ミクロ経済学の技も良いかも知れもませんが、個人的にはあんまりハマりませんでした。手にとって自分に一番合いそうなものを探してみてください)
前者は計算量がかなりあり、双対性やエッジワースボックスなど、計算が多く求められる問題などで重宝します。一方で、ゲーム理論(特にオークションなど)や不確実性などの、計算よりも発想が重要となる問題については内容が薄く感じました。こちらについては後者の方が問題が充実していると思います。
また、ゲーム理論に関してはギボンズの「経済学のためのゲーム理論入門」もやりました。院試レベルに止まらず、ゲーム理論専攻でなければこの本の内容だけで大学院でも十分な気がします。(均衡の存在条件などの厳密性には欠けます。そこらもしっかり学びたければ(上級ミクロではなく)個別の授業を大学院で取るのをお勧めします。)
マクロ経済学
マクロ経済学において、メインテキストは斎藤先生らの「マクロ経済学」か二神先生の「マクロ経済学」です。マクロに苦手意識があって、初級レベルから入りたい、または簡単に復習したい方は中谷マクロがお勧めです。私は中谷マクロ→二神マクロで学習し、斎藤マクロは図書館で借りて辞書的に扱いました。この中谷マクロを勉強する際、「スタディガイド 入門マクロ経済学」も併用して勉強しました。この本は中谷マクロを補完する形になっているので、理解が深まります。
演習書としては教科書の演習部分に加え、「演習マクロ経済学」を使いました。
院試でのマクロは、単純にISLMの計算が解ける云々より、応用したもの(特に金融政策や成長論)を理解できているかを試してくる感じなので、ミクロと同様過去問をみて解ける具合を確認し、それに合わせて復習していってください。特に成長論あたりと金融政策の2つになると思います。
数学
数学は試験科目にあったりしますが、その対策のためではなくミクロやマクロの理解を深めることを目的として勉強した方が絶対に良いです!大学院から一気に数学のレベルが上がるのでその準備も兼ねてますが、何故微分するのか、弾力性とは何か、など、ミクロなどを勉強しているとサラッと出てくる内容をしっかり数学的観点から理解することで、ミクロやマクロの問題で仮定を緩められても対応できる様になります。(数学勉強していないと阪大とか一橋の応用問題とか解けない気がする)
数学のテキストは多くありますが、具体的に経済学にどう応用されているのかのテキストは多くはないです。私はACチャンの「現代経済学の数学基礎(上)」と「現代経済学の数学基礎(下)」を使って勉強しました。院試レベルとしては(上)だけで十分です。(下)では動学モデルとか非線形計画(e.g., クーンタッカー条件)を扱うので、明らかにやりすぎです。院試が終わった後に勉強すると良いと思います。
または、「経済学で出る数学」も良いと思います。院進後に中身を見てみましたが、経済分野との絡め方が綺麗だなと思いました!上のACチャンのも良いですが、経済学への落とし込み具合で言えば少し劣る気もします。とはいえ下巻は大学院で習う最適条件などもあり、内容の豊富さではこちらに軍配が上がると思います。
また、私は補完的に「経済学・経営学のための数学」や、線形代数の勉強で「やさしく学べる線形代数」を使いました。
ここまでは院試レベルから大学院で必要な基礎レベルの教科書を紹介しましたが、大学院において他に重要となるのが集合位相です。扱う財の数がn(学部では単純化で2財が基本)になり、図示できないのが普通(それっぽいのは書きます)なので、それを集合などの観点から説明しようとします。なので、ここの知識がないと何をしているのか全く理解できなくなります。私は松坂先生の「集合・位相入門」で勉強しました。正直あんまり院進までにこの分野を勉強していなかったので、上級ミクロは”本当に”苦労しました。笑
完璧にしておく、というよりは集合位相のイメージができる様になっていることが大事だと思います。でないと私のように何を言ってんだコイツ状態が続いてしまいます。
統計学
ここからは、統計学が院試で必要、もしくは大学院までに仕上げとくべきレベルが気になる方はお読みください。
まず統計学が完全に初めての場合は「完全独習 統計学入門」から入ることをお勧めします。
テキストとして東京大学出版の「統計学入門」が有名(入門と書いてありますが、初学者向けではないです)ですが、いきなりこれから始めると、挫折する可能性が高いです。The教科書って感じなので説明が淡白です。しかし、質はかなり良いので、こちらを学習し終えれば学部では十分だと思います。院試の統計学はそこまで難しくないので、ミクロかマクロどちらかに苦手意識、もしくは問題を見て得点が望めなさそうならこっちにシフトするのもありです。
計量経済学
統計学の知識をもとに、データから傾向を掴む為に使用されるのがこの計量経済学です。
大学院入試で計量経済学を受けていない(院試後に準備として勉強)ので、レベル感がわからないのですすみません。。もし院試で使うのであれば、後述する鹿野先生のか山本先生のを使うと良いと思います。
統計学を勉強した後、まず「実証分析のための計量経済学」を読むことを勧めます。理論的な背景からの理解ではなく、得られた結果をどう解釈するのか、どのような推定方法があるのか、どういった理由からこの推定手法を使うべきという説明がかなりわかりやすいです。厳密性には欠けますが、計量経済学の理解を促進させる良い教材だと思います。
概要が掴めたら、次に理論的背景を勉強していきます。私は末石先生の「計量経済学」と難波先生の「計量経済学講義」を使いました。前者は漸近理論とか収束とか、その辺の説明が日本語のテキストの中でもかなり充実していると思います。後者の本の後ろ半分くらいは数理統計のパートとなっており、行列・線形代数を使った統計学・計量経済学を勉強する上で必要となる基礎をまとめて勉強できます。上級のテキストでは行列表記が基本なので、そこに慣れる為にもお勧めです。
末石先生のは完全に中級レベルなので、少し難しいと感じたら鹿野先生の「新しい計量経済学 データで因果関係に迫る」は初級〜中級への橋渡しにちょうど良いレベルなので間に挟んでみては、と思います。(漸近理論なんて院試で絶対出ないんで、末石先生のを院試対策にするのは明らかオーバワーク感あります。)
上記以外に西山先生の「計量経済学」を使っていた後輩もいました。上のに比べかなり分厚いですが、実証の例も多く、読み応えもあってお勧めみたいです。
また、山本先生の「計量経済学」のテキストを使ってる人はよく見かけます。こちらのテキストは使っていないので詳しいことはわからないですが、院試の定番?らしいのでおそらく初級〜中級あたりだと思います。
主要な大学院について
まず、経済の大学院に進学する上で、よっぽどの理由がない限り以下の大学に進学することをお勧めします(あくまでお勧めです!他の大学にも良い先生はたくさんいます。)
その理由として、世界的に有名な先生が何人も在籍していることや、研究セミナーが充実しており最先端の研究に触れられる機会が多いことにあります。またこれらの大学それぞれに強い分野はあるものの、地方の大学に比べれば様々な分野の先生が在籍されています。自分がいま都市経済や空間経済に興味持てたのも、京大に在籍したからこそです。自分の視野を狭くしないためにも大事だと思います。
(それに就活する際でも学歴が使えますし。)
その上で、どの教授のもとで指導を受けるかを考えましょう。例えば国際経済学でも貿易なのか、経済成長なのか、金融なのか、など多岐に渡ります。大学の教員紹介で、先生の専門分野に〇〇経済学などが書いてあるので、自分の興味ある分野でピックアップし、その上で先生の業績から論文のタイトルを見てさらに絞り込んでいきます(ex. 国際経済学でも貿易に興味あるから、国際金融を扱ってる先生は除外など)。
また大学には研究所なるものがあり((例)京都大学経済研究所)、そこに在籍されてる先生が大学のHPには載ってないパターンもあるので気をつけてください。(例えば京大経済で調べて出てくるページは学部生の指導も行う先生だけ紹介されてる。)
後は、それらの先生がどれだけ論文を書いているのか(業績がスカスカだと不安しかない)、どのようなジャーナル(阪大の安田洋祐先生のまとめが参考になります)に載せているのかで決めると良いと思います。業績が多い先生は人脈も広く、思いがけない機会を得ることができる可能性が高いです。
最後に、業績や専門分野と紹介しましたが、その先生が教育に熱心かどうかも個人的にはかなり大事だと思います。業績は素晴らしくても、院生には基本放任主義な先生もいます。自分で研究の道を歩けるのであれば全く問題ないのですが、私としては色々と指摘してもらって修正してもらいたいものです。先生と議論を深めることで、どういった視点で論文を読むべきか、自分のリサーチクエッションに答えるに必要な手段は何か、など様々な面で勉強になります。
まとめ
ここでは大学院入試で必要となるものや、大学院選びを紹介していきましたが、少しでもこれから大学院に進学を考えている人たちの役に立てばと思います。
Comments