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執筆者の写真Rinki Ito

経済博士課程の生活はどんな感じ?

更新日:2023年12月4日



 まず何年在籍するのかですが、博士課程は3年が卒業の目安と言われています。というのも、卒業に必要なものが単位ではなく論文で、(大学によって違うかもしれませんが)基本的に論文3本分をまとめた博士論文を提出しないといけません(さらに京大では3本のうち1本は公開論文(理想はジャーナル、もしくはDP)である必要があります)。1年につき1本だから3年が目安、という事です。書けなければもう1年になります(辛い)。


 生活については研究漬けなんだろうな、というのは正解なのですが、もう少し具体的に、私の送ってきた生活を元につらつら書いてみようと思います。

 

博士の生活の概要


 まず、前提として博士は基本授業もなく、3年という時間を全て自分でコントロールできるので、人によってかなり違うという事は認識しといてください。とはいえ以下で話す「研究」というカテゴリーについては大体似たようなもんじゃないかな、と思います。


 では私が送ってきたD3までの生活ですが、図で示すとこんな感じです。


図の上部分が研究で、下部分が研究以外のもので主要なものだけピックアップしてみました。授業については、京大では卒業要件に入ってないので受ける必要はありません(他の大学ではあるかも?)。自分が興味のあるものがあれば受けるって感じで、自分は都市経済学とか受けてました。ただ授業を受けて先生と仲良くなるのは大事だと思います。そこで共同研究のチャンスが来たり、(自分を知ってもらう意味で)アカデミックの人脈を増やすきっかけになります。これらはアカデミックの就職にも役立ちます。

 

研究


 D1は修論の修正がメインで、学会で発表して問題点を改善し、ジャーナルへの投稿を目指します。自分もゼミの友達もD2の5,6月頃にジャーナルに論文を出しました。これがアクセプトされるかがアカデミックでの就職に大きく関わります。

 

(補足)アカデミック(大学)への就職

 アカデミックへの就職を考えてる方向けですが、最も重要視される点は研究の成果物(特に査読論文)です。1本査読論文があるだけでかなり違います(低いレベルのジャーナルでもあるだけマシ)。学振はアカデミック世界における登竜門的な感じで言われてますが、学振だけ持ってても査読論文に比べれば期待するほど評価されないと思います。

 成果物以外のプラスアルファの要素として、授業経験、コミュニケーション能力もあると嬉しいみたいです(先生達との飲み会で聞きました)。授業経験について、募集要項に非常勤の経験があることを入れている大学もあるぐらいです。必須ではないですが、やはり授業を教えた経験のある人は雇いやすいと思います。次にコミュニケーション能力ですが、アカデミックの世界は狭く、助け合いの精神がすごいあるので、一匹狼みたいな感じで全体の輪が乱される事は嬉しくありません。飲み会等を通じ、自分の人間性を事前に伝えられれば採用する時も安心ですので、積極的に飲み会に参加していきましょう。

 

 次にD2ですが、特に書くことはなくひたすら研究のみです。先生からよく言われましたが、ここでの研究が自分の売りとなる分野になります(ジョブマーケットペーパーとも言います)。テーマ以外にも、どんなアプローチで研究を進める人間なのか等、アカデミック就活において軸になる部分です。


 最後にD3ですが、2本目や3本目で学会発表をしていき、最終的に(京大では)12月初旬の博論提出に向け死に物狂いになる1年です。ただ、製本においては直前での印刷になると問題が生じた時の対応が取れずそのまま終了、という最悪なケースがあるため、余裕を持っておくことが大事です。

 

研究以外


 次に研究以外の面を紹介します。博士課程は研究だけに集中するか、他の事にも手を出すかでかなり変わります。自分は後者を取り、ひたすら知的好奇心の思うままに行動し、様々な経験を積む事を目標にしました。

 自分がしてきた事の中で特筆すべき事といえば、起業・財務省(財総研)・UTEconの3つになります。起業は友達からの誘いがきっかけで、ここでは初めての機械学習やビジネスなど、全てが新鮮でした。財務省は先輩からの紹介で、気付けば税関データに関するプロジェクトに参加でき、非常に良い経験となりました。最後にUTEconですが、ゲーム理論や産業組織論でのアプローチを主とした分析会社で、これは自分の専門とは全く関係ないため完全に好奇心です。日本経済学会での渡辺安虎先生の講演がきっかけで、経済がビジネスに使えるのか!と心躍り応募しました。


 就活について、まず民間企業に関してですが、前者は学部生や修士生とやることは変わりません。ただ気をつけて欲しいのが、企業向けなガクチカが博士課程では作りづらい所です。基本研究しかしないですし、所謂チームワーク的なことは皆無です。学部時代の話も4年前とかになってくるので、博士課程の間に能動的に何かしておく必要があります。これについては別の記事で書きたいと思います(こちらで紹介しました「経済博士課程の民間就職活動」)。


 アカデミックに関しては、まずDCの時と同様PDへの申請に備えます。注意点として、

  1. 所属予定先から申請用のアカウントを作成してもらう必要がある

  2. 締切が所属予定先の大学

  3. 所属予定の先生の推薦状が必要

の3点です。1点目に関して、申請自体の締め切りが例えば5月半ばでも、申請のためのアカウント作成は4月末までと決まってたりします。まず申請アカウントを作る必要があるということを知っておかないと、気付いた時には作成の締め切りが過ぎており、PD申請できず終了ということになってしまいます。2点目も、大学によって締切が異なるため、事前にしっかり確認しておく必要があります。東大とか一橋は京大よりも2、3週間早かったので結構焦りました。3点目について、締切を把握してないと直前で(しかもほぼ初対面であるのに)お願いするという失礼なことになってしまうので気をつけましょう。

 大学や研究機関への応募に関しては、大体5、6月くらいからJREC-INで大学等から公募が出される(再募集で8月とかから出される場合もあります)ため、自分の専門にあったものがないかを逐次チェックします。書類通過後には模擬授業を課される場合もよくあるため、そういった準備も大事です。注意すべきは、その大学のレベルに合わせた授業資料を作成する必要があることです。淡白な説明より、具体例や日常に絡めるのを意識して作ると良いと思います。


 図には書いてないですが、時間はいくらでもコントロールできるので、いろんな趣味に手を出しました。絵描いたり登山したり、コーヒーや紅茶勉強したり。また起業の際に機械学習に興味持ったので、研究には必要ないため趣味として勉強しました。気になったものには手を出せる時間があるのは最高ですね。


 私は人に恵まれ、代え難い経験をたくさん積むことができました。予想し得ない3年を過ごすを目標に進学したため、少しはそれに貢献できたかな、と思ってます。

 

おわりに


 本記事では博士課程の生活がどんな感じなのかを紹介しました。あくまで一例ですが、イメージを掴むには問題ないと考えています(研究面ではゼミの友達と一緒ですし)。

 時間の使い方は本当に自由です。博士だからこそより高度な分析を任せられるようなインターンにも参加できます。お金という軸で見ても、自分は学振と研究バイトで平均的な新卒以上にもらえてますし、進学した事に後悔は全くないです。

 しかし、博士は25~27歳あたりで、ビジネスにおいて重要な年齢でもあります。その機会費用は人によってかなり大きいものになりますし、進学により生じる責任は修士とは比べものになりません。そうした面を踏まえた上で、本記事が進学の参考になればと思っています。

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